自然共生サイト申請支援―ネイチャーポジティブの増進に向けて―

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<この記事について>
自然共生サイトは、令和5年度から開始され、令和7年度より法制化されました。主な相違点は、生物多様性の「区域」から増進する「活動」に重きを置くようになった点です。本記事では、自然共生サイトを申請するにあたり、申請内容における重要なポイントや旧制度と新制度の比較についてまとめました。

先日、弊社(株式会社地域環境計画)が開催しました自然共生サイト申請に関するウェビナーにて、独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)様にもご登壇いただきました。ご視聴いただき、心より感謝申し上げます。

ウェビナーでは、自然共生サイトとその制度、そして申請のポイントにつきまして詳細にご紹介しましたが()、本記事では、ウェビナーでご紹介した内容の簡易版として主たるポイントに特化してお伝えします。
※ウェビナー開催の記事はこちら

自然共生サイトの法制化

ネイチャーポジティブ(※1)の実現に向けた取組の一つとして、「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」(2)に基づき、企業や地方公共団体等が作成する、里地里山の保全、外来生物の防除、希少種の保護といった生物多様性の維持・回復・創出に資する「増進活動実施計画(※3)」又は「連携増進活動実施計画(※4)」を認定します。
認定された計画の実施区域のことを『自然共生サイト』と呼びます。

(自然共生サイトについて―独立行政法人環境再生保全機構)

※1…生物多様性の損失を食い止め、回復させること。
※2…ネイチャーポジティブの実現に向け、企業等による生物多様性増進 のための活動を促進するために、活動に係る計画の認定制度の創設、認定活動に対する手続のワンストップ化・規制の特例措置等を支援する法律。
※3…企業等が作成する、里地里山の保全、外来生物の防除、希少種の保護といった生物多様性の維持・回復・創出に資する活動計画のこと。主務大臣が認定する。

※4…市町村が取りまとめ役として地域の多様な主体と連携して行う活動計画のこと。主務大臣が認定する。なお、市町村のみが申請できる。

「増進活動実施計画」または「連携増進活動実施計画」の認定を受けると、活動内容に応じて、自然公園法、種の保存法、自然環境保全法などの手続きをワンストップ化・簡素化する特例を受けることできます。

そのため、令和5、6年度に認定した自然共生サイトに加えて、令和7年度からは、地域生物多様性増進法に基づき認定された、実施計画の実施区域も「自然共生サイト」となります。
また、詳細は次の項目で触れますが、OECM(生物多様性保全に資する地域)との関係性についても、変更点がありました。

この「自然共生サイト」は、既存の保護地域だけでなく、企業の森やビオトープ、里地里山などの民間の活動が生物多様性に貢献している区域を含めることができます。そのため、2030年までに陸と海、それぞれ30%以上を保全するという国際目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」の達成に向けた、日本独自の取り組みの核となります。

旧制度と新制度(法制化)の比較

令和5年度からの旧制度の「自然共生サイト」と、令和7年度からの新しい「自然共生サイト」の立ち位置は、上記の点で異なります。令和7年度からは法制化され、地域生物多様性増進法という法律に基づくようになりました。

大きな違いとしては、認定対象が「区域」から「活動実施計画」に変更になった点です。認定された活動実施計画の実施区域が「自然共生サイト」になります。
また、認定対象においても、生物多様性が豊かな「区域」から、豊かな生物多様性を「維持する活動」「回復・創出する活動」に変更になりました。
さらに、OECMについても、元々は自然共生サイトのうち、国立公園等の保護地域を除いたエリアがOECMとして国際データベースに登録されています。
まず、現状として生物多様性が豊かであり、それを維持する活動として認定を受けた場合は、令和5年度の制度開始から引き続き、保護地域との重複を除いてOECMとして登録されています。
これに加え、法制化に伴い、生物多様性を回復・創出する活動が認められた区域は、認定後の回復・創出活動を継続した結果、生物多様性が豊かになった時点でOECMとして登録される点が追加になりました。

このように、今までは主に生物多様性の豊富な区域に限定されていたものが、生物多様性を維持・回復・創出する活動に重きを置くようになりました。

自然共生サイトの申請は、法制化前と比較すると申請対象が増えたため、間口が広がったと言えます。しかし、法制化されたことにより生物多様性の保全の質や継続性がより厳格に審査されるようになり、より詳細な情報の提示を求められるようになりました。しかし、そのハードルをクリアすることにより、『国に認められた』という、より強固な証明を得ることができるようになりました。

自然共生サイト認定制度の特徴

自然共生サイトは、窓口である独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)に申請し、最終的に主務大臣(環境大臣・農林水産大臣・国土交通大臣)に認定されることで、登録されます。

大まかな審査の流れは、上記のようになります。審査期間は、正式受理から6か月~7か月程度かかります(書類に不備がある場合は正式受理されず、提出から認定まで6か月以上かかることがあります)。
申請準備の後の流れについて、詳細を記載します。

①申請受付

申請を行う場合は、申請書類一式を事務局(ERCA)に提出します。

②予備審査

事務局において、提出された申請書類を確認します。必要に応じて、申請者に対して、提出された内容に関する確認や不足書類の提出を求めます。

③有識者審査

生物多様性の増進に関する専門的な見地から意見を聴くため、有識者による審査を行います。

④省庁審査

主務省庁(環境省、農林水産省、国土交通省)による審査を行います。

⑤認定

審査の結果を踏まえ、環境大臣・農林水産大臣・国土交通大臣が認定を行います。

対象となる3つの活動の類型タイプ

【旧「自然共生サイト」と新「自然共生サイト」の比較】の項目でも触れましたが、自然共生サイトの認定の対象となる活動は、以下の3つの類型タイプがあります。

この生物多様性の「維持・回復・創出」タイプが三本柱となります。

生態系タイプについて

自然共生サイトを申請する際、「生態系タイプ」という項目に記載が必要です。これは、地形や植生に応じた区分を基本として、「森林」「草原」「農地」「都市」「陸水域」「沿岸域」の6つに大きく分類し、さらにそれぞれに含まれる生態系・土地利用の違いを考慮して細分化し、最終的に15の区分としています。ここでは、生物多様性を保全・回復・創出する“活動”の違いに着目して区分しています。
なお、1つのサイトであっても、複数の生態系タイプに該当する場合もあります。

▲生態系タイプ区分一覧。「森林」 「草原」 「農地」「都市」「陸水域」「沿岸域」の6つの区分それぞれに含まれる生態系の特徴に合わせて、15の生態系タイプに分類しています。(引用元:環境省『効果が期待できる活動手法』p.24)

生物多様性の価値のポイント

自然共生サイト(維持タイプ)として認定を受けたい実施区域は、「生物多様性の価値」1~9のいずれか1つが認められる必要があります。
なお回復・創出タイプは、価値2~9のいずれかを目指す活動である必要があります。

各価値で共通して写真が必要となり、評価のポイントにつながります。
価値を示す適切な写真を選択しましょう。
また、種名や写真に誤情報や矛盾があると、申請内容の信頼性に疑義が生じます。
生態系タイプと確認された生物は合致していますか?
(例)里地里山であれば里地里山の生物、草原であれば草原の生物など
誤同定はありませんか?

価値(1)公的機関によって、生物多様性保全上の重要性が既に認められている場

対象となるのは、『重要里地里山』、『重要湿地』、『重要海域』、『特定植物群落・巨樹巨木林』

上記4つ以外は認められません。

価値(2)原生的な自然生態系が存する場

原生的な自然であることを示す必要があります。

(例)自然植生度9~10であること、生物リスト(原則、最近5年以内の調査結果)等

価値(3)里地里山といった二次的な自然環境に特徴的な生態系が存する場

二次的な自然であることや人のかかわりが維持に寄与している実態を示す必要があります。

(例)生物リスト(原則、最近5年以内の調査結果)、活動状況等

人間の適切な関与がないと認められません。

価値(4)生態系サービスの提供の場であって、在来種を中心とした多様な動植物種からなる健全な生態系が存する場

・在来種中心の健全な自然であることを示す必要があります。
・生態系サービスの提供状況について示す必要があります。

(例)生物リスト(原則、最近5年以内の調査結果)等

園芸種や外来種が中心であると認められません。

価値(5)伝統工芸や伝統行事といった地域の伝統文化のために活用されている自然資源の供給の場

地域の伝統文化に自然資源(資材、場所)を長年に渡って供給するための管理がなされ、独特な生態系を存しているかを示します。

(例)地域伝統のかやぶき屋根に用いる材料を提供等

・自然資源の供給が無い(一度だけの実績では不可)と認められません。
・歴史が浅く、伝統文化と言えない場合は対象外です。

価値(6)希少な動植物種が生息生育している場あるいは生息生育している可能性が高い場

希少種(レッドリスト、レッドデータブック掲載種)の生息生育を示す必要があります。

(例)生物リストと対象種掲載レッドリストとカテゴリー(原則、最近5年以内の調査結果)等

・本来の生息生育条件ではない(動物園・植物園・花壇のような状態)場合は対象外です。
・サイト内で採餌や繁殖をしていない場合は認められません。
※鳥類等の移動力の高い種では要注意

価値(7)分布が限定されている、特異な環境へ依存するなど、その生態に特殊性のある種が生息生育している場又は生息生育の可能性が高い場

全国的に見て分布限定、特異環境依存であることを示す必要があります。

(例)東海丘陵要素植物:東海地方の湧水湿地を中心に固有・準固有あるいは隔離分布する植物(トウカイモウセンゴケ等)等

・単に希少というだけでは本項目では認められません。
※価値6で申請可能な場合があります。

価値(8)越冬、休息、繁殖、採餌、移動(渡り)など、動物の生活史にとって重要な場

動物の生活史にとって重要な場であることを示す必要があります。

(例)渡り鳥にとって重要な湿地・干潟等
・対象とする動物種の生活史において区域の果たす役割が明確であるか(越冬、繁殖など)
・周辺も含めて、当該地がその個体群の生息に不可欠なのか

価値(9)既存の保護地域又は自然共生サイト認定区域に隣接する若しくはそれらを接続するなど、緩衝機能や連続性・連結性を高める機能を有する場

保護地域・他の自然共生サイトとの連続性・連結性があることを示す必要があります。

(例)対象種や植生の具体例を明示する(ブナ林が連続している、動物が移動している等)

保護地域そのものの場合は対象外(国定公園に含まれる等)です。

自然共生サイト 申請のメリットとは?

自然共生サイトを申請することに、どのようなメリットがあるでしょうか?ここでは申請するこにより得られる恩恵の部分を見てみたいと思います。

❶「貢献」の“可視化”

企業で保有している工場緑地や都市の森、里地里山など、周囲の環境に配慮しつつ、適切に保全し、維持・管理をしていくのは非常に大変なことです。そして、それを社外へPRしたり、客観的に証明したりする機会もなかなかありませんでした。
そこで、自然共生サイトとして環境省から認定を受けることにより、自社の保全活動が国の目標でもある『30by30』に貢献していることが公式に証明されます。

また、認定ロゴマークを自社サイトやIR資料などに使用することができ、環境に配慮した企業としてのブランドを訴求することができます。

❷インセンティブ措置について

自然共生サイトへの支援を行う方に対するインセンティブ措置として、自然共生サイトへの支援を公的に認定するための支援証明書が発行されることとなりました。
支援証明書の取得により、()TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に沿った情報開示や、CSR活動の証明への活用等のメリットがあります。
※企業が自然資本や生物多様性に関する財務情報を開示するために設けられた、国際的な枠組み のこと。

❸ESG投資の価値向上

「自然環境への貢献」は、形だけであったり、客観的データの無いものでは意味の無いものになってしまいます。自然共生サイトにおいても、企業が客観的に見て充分な活動をしているのかが重要となってきます。
そこで、自然共生サイトの認定により、国による“お墨付き”を得ることで、「()ESG投資」を重視する投資家や金融機関に対して自社の信頼性を客観的にアピールできます。
※環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの非財務要素を考慮した投資手法。企業価値の向上や、長期的なリターンの創出を見出せることで注目が集まっている。

ESGへの取り組みが投資家や金融機関から評価された場合、資金調達の安定化も目指すことができます。

自然共生サイト認定数

<法制化前>
■令和5年度
・令和5年度(2023年度)前期:122
・令和5年度(2023年度)後期:62
■令和6年度
・令和6年度(2024年度)前期:69
・令和6年度(2024年度)後期:144

<法制化後>
■令和7年度
・令和7年度(2025年度) 第1回:120(新規認定)、81(移行分)
・令和7年度(2025年度) 第2回:37(新規認定)、21(移行分)

直近の令和7年度第2回の認定において、新たに58か所(37か所+21か所)が加わりました。
そして2026年1月現在、自然共生サイトは合計485か所認定されています。
※法制化後は、新規分をカウントしています。
※移行分は、旧制度から新制度へ移行したものです。

自然共生サイトの所在地は、関東・近畿などの都市部の割合が高い傾向にあります。
申請主体は、企業が約半数で、地方公共団体やNPO等様々な主体が参画しています。

さいごに

株式会社地域環境計画は、「生きもののスペシャリスト集団」として、技術力とこれまでの実績に基づき、ネイチャーポジティブの実現を支援します。弊社には以下の強みがあります。

  1. 豊富な支援実績
    自然共生サイトの認定(旧制度)が開始される前年の2022年から伴走支援業務などで、環境省や自治体、各企業と情報交換を重ねてまいりました。
    現行制度の認定においても、受理されたサイトのうち、12サイトにおいて弊社が支援をさせていただいております(2025年10月末時点)。
  2. 地域の生きものたちを熟知
    北海道から九州まで7拠点を展開しており、国内全域において地域の生きものたちを熟知した技術者を数多く擁しております。
    また、クマやイノシシ、アライグマをはじめとする野生動物の管理・マネジメントを専門とする部署を設けており、 自然共生サイトの認定取得のみならず、運用途上で課題となる獣害対策等につきましても、科学的根拠に基づいたサポートを提供いたします。
  3. 「付加価値の創造」と「保全と活用の二刀流」
    緑地や活動そのものに社内的価値、社外的価値を見出すことが重要であり、そのサポートが可能です。
    保全を進めて活用を止めるのではなく、どちらでも両立できる活動を展開し、クライアントの本業との親和性を高めます。

このように、行政や民間企業の自然共生サイト登録にあたり、申請支援として候補地の抽出や各種情報収集のほか、対象エリアの動植物調査、生物多様性の現況と増進活動実施計画の提案などの実績がございます。
30by30の実現に向けて、精一杯サポートさせていただきますので、ぜひとも気軽にお問い合わせくださいませ。

FAQ

Q
「自然共生サイト」の申請に締め切りはありますか?
A

ございません。常時受け付けています。

Q
審査期間はどれぐらいですか?
A

A.正式受理から6か月~7か月程度かかります。
(書類に不備がある場合は正式受理されず、提出から認定まで6か月以上かかることがあります。)

Q
申請に費用はかかりますか?
A

自然共生サイトの申請や登録に係る費用は無料です。

Q
自然共生サイトに申請するメリットは何ですか?
A

大きく2点あります。
・30by30という国際的な目標の達成に貢献できます。
・SDGsやネイチャーポジティブなど、企業に求められる社会的責任に対応していることの担保となり、ESG投資等を呼び込みやすくなります。

Q
誰でも申請できますか?
A

市町村以外(企業、NPO、学校、個人など)が主体の場合、「増進活動実施計画」として申請できます。市町村が主体の場合は、「連携増進活動実施計画」として申請できます。

Q
申請先や相談先はどこですか?
A

申請窓口は、独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)となっています。また、相談窓口も設定されています

Q
旧制度で自然共生サイトに認定したサイトは、新制度である法律に基づくサイトとして、自動的に認定されますか?
A

自動的に移行・認定はされないため、新たに申請が必要です。
※基本的に自然共生サイトの認定を受けているものは、実質的に、新法に基づく「増進活動実施計画」又は「連携増進活動実施計画」の認定に必要な審査を終えていると考えられています。
そのため、可能な限り事務負担を軽くできるよう、既に審査した項目についての審査を省力するなど、合理的かつ効率的に取り扱われる予定です。

参照WEBサイト

■自然共生サイト|30by30|環境省
(2025.12.23閲覧)
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/kyousei/
■自然共生サイトについて|独立行政法人環境再生保全機構
(2025.12.23閲覧)
https://www.erca.go.jp/nature/shizenkyousei.html
■自然共生サイト認定スケジュールについて|独立行政法人環境再生保全機構
(2025.12.23閲覧)
https://www.erca.go.jp/nature/schedule.html
■地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律(地域生物多様性増進法)の概要|自然共生サイト|30by30|環境省
(2025.12.24閲覧)
https://www.env.go.jp/content/000253465.pdf
■事前相談(申請を検討されている方)|独立行政法人環境再生保全機構
(2025.12.24閲覧)
https://www.erca.go.jp/nature/soudan.html
■効果が期待できる活動手法|環境省
(2026.01.22閲覧)
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/documents/lowBio/30by30site-append01-ActivityMethodsEffect.pdf
■地域生物多様性増進法に基づく自然共生サイトの認定について(令和7年度第2回)|農林水産省ウェブサイト(環境省・農林水産省・国土交通省 共同発表資料)
(2026.01.23閲覧)
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/attach/pdf/251216-3.pdf
■地域生物多様性増進法の施行後の「自然共生サイト」制度の扱いについて|独立行政法人 環境再生保全機構
(2026.01.23閲覧)
https://www.erca.go.jp/nature/pdf/30by30site-NaturalSymbiosis.pdf

今村 隼人

Hayato IMAMURA
株式会社地域環境計画 営業本部 技術営業部