赤い「首」にご用心!サクラやモモを枯らす、クビアカツヤカミキリの防除計画作成のススメ

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<この記事について>
特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」は急速に分布を拡げ、モモやサクラに甚大な被害を与えています。被害防止には早期発見と初動対処が重要です。当社では侵入リスクの高い場所をGISで分析して警戒エリア図を作成。自治体の地域特性を反映した早期防除計画を策定し、侵入阻止を支援します。

「ちいかんラボ」へようこそ。

突然ですが、皆さんは「クビアカツヤカミキリ」という昆虫をご存知でしょうか?
最近では、TVのニュースや新聞でも取り上げられる機会が増え、その名を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

クビアカツヤカミキリは、「特定外来生物」に指定されている昆虫で、中国、台湾、朝鮮半島、ベトナム北部等が原産のカミキリムシです。
ところが日本国内において急速に分布域を拡大しており、モモやサクラといった樹木に甚大な被害をもたらしています。

地域環境計画では、一昨年度及び昨年度、未侵入地におけるクビアカツヤカミキリ」の防除計画策定業務に取り組みました。
※詳細はこちらをご覧ください

特定外来生物のような外来種の対策は、対象種の定着段階(未定着、定着初期/限定分布、分布拡大期~まん延期、減少期~根絶最終期、根絶確認期)によって、高い効果を得るための対策が異なります。

▲外来種の定着段階と防除開始時期による対策効果のイメージ
(引用元:東京都環境局
『東京都 外来種対策行動の手引き みんなで実践!外来種対策からはじめるネイチャーポジティブp.10
定着段階による優先度をふまえた目標や対策の設定
※保護地域・重要地域:地域の野生生物の生息・生育地や生態系の存立する場所のうち、種や環境特性等から考え優先的に保全に努めるべき地域
(引用元:東京都環境局『東京都 外来種対策行動の手引き みんなで実践!外来種対策からはじめるネイチャーポジティブp.10

未侵入地では、侵入・定着を阻止するため、対象種の侵入に関する情報収集、監視の徹底といった対策が必要になってきます。さらに、仮に侵入してしまった場合は、初期のうちに対処する必要があります。初動で抑え込むことが可能になれば、経済的な損失は小さくなります。また、地理的特徴として、面積が狭い島しょ部は、クビアカツヤカミキリに限らず、外来生物の被害が瞬く間に広がりやすいため、特に侵入に注意しなければなりません。

今回は、このクビアカツヤカミキリの防除計画策定業務で得たノウハウをもとに、クビアカツヤカミキリの防除計画について紹介していきます。

▲サクラの木にとまるクビアカツヤカミキリ

これがクビアカツヤカミキリだ!

クビアカツヤカミキリは、中国や朝鮮半島、ベトナムなどが原産のカミキリムシです。名前の通り、首(厳密には胸です)が赤く、それ以外の部分の色は光沢のある黒となっています。ちなみに赤い部分は背中側だけで、腹側は黒いです。

オスはメスよりも触角が長く、自分の体よりもはるかに長くなります。

▲左:メス、右:オス
オスは触覚がとても長いです。

成虫の体長は25㎜~40㎜程度で、国内では主にバラ科の樹木(サクラ、ウメ、モモなど)に穴をあけて産卵し、幼虫は樹木内部を食い荒らしてしまいます。

日本では、2012年に愛知県で発見されて以来、埼玉県、群馬県、東京都などの関東圏、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、徳島県などにも分布を拡大させています。

侵入経路としては、海外からの輸入木材や輸送用パレットなどに幼虫が潜伏した状態で輸送され、やがてそれらが国内で成虫に羽化し、繁殖したものと考えられています。

▲2012年時点の侵入エリア。愛知県のみとなっています
▲2025年時点の侵入エリア。15都府県に及んでいます

このように、本来日本に生息していない生物は、外来生物法という法律で「外来生物」と呼ばれます。

特にこの中でも、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの(あるいは及ぼす恐れのあるもの)は「特定外来生物」に指定されています。この特定外来生物の取り扱いについては、輸入、放出、飼育、譲渡等の禁止などといった厳しい規制がかかります。

クビアカツヤカミキリも、この特定外来生物の1種です。

何が問題になっているの?

クビアカツヤカミキリは、成虫が樹木に穴を開けて産卵し、樹木内を幼虫が食い荒らしてしまうことで、モモなどの果樹やサクラなどの街路樹を枯死させてしまいます。

そのため、農業被害や、景観悪化、倒木事故なども予測され、生活環境にも関わる大きな問題となっています。

被害にあっている木を見極めるためには?

5~9月頃、幼虫は樹木内部を食べると、フラス(木くずと糞が混ざったもの)を盛んに木の外に排出するようになります。このフラスは特殊な形状で、細長く、芋虫のような形状をしています。正確に見極めるには、フラスを崩して、顕微鏡等で観察する必要がありますが、これが、クビアカツヤカミキリの幼虫が木の中にいる目印になります。

▲クビアカツヤカミキリのフラス
▲フラス(拡大)
▲新しいフラスは固まっていますが、古くなると脆くなります
■被害にあった樹木の様子
▲サクラ(枯死)
▲サクラ(枯死による倒木)

被害範囲と実例は?

クビアカツヤカミキリの被害は、栃木県、群馬県、茨城県等の北関東のほか、徳島県や兵庫県など、15都府県で確認されています(2025年2月末時点)。
主にバラ科の植物である、モモ、ウメ、スモモ、オウトウ(さくらんぼ)等の果樹や、ハナモモ、サクラ等の街路樹等を対象に食害しています。

群馬県の事例では、2024年10月時点で、10,508本被害が確認されており、2017年に682本の被害が記録されて以来、8年で約15.7倍被害が増大しているのが分かります。

また、和歌山県では、2025年7月末時点で農地(モモ、スモモ、ウメ)では6市6町、1,448園地、7,389樹 、農地以外(サクラ等)では6市8町、266地点、734樹で被害を確認されています。2023年8月末時点で確認された被害が、農地(モモ、スモモ、ウメ)では  5市3町、498園地、2,007樹、街路樹等(サクラ等)では5市1町、51地点、120樹だったことから、約2年で明らかに被害が増大しているのが分かります。

どう対策したらよいのか?

地域環境計画では、クビアカツヤカミキリの早期防除計画の具体的な内容として、以下の3点にまとめています。

①侵入リスクの高いエリア・被害が甚大になる可能性のあるエリアの把握

クビアカツヤカミキリは、前述したとおり、サクラやウメ、モモなどをはじめとしたバラ科(主にサクラ亜科)植物に被害を及ぼします。したがって、侵入リスクの高いエリア、被害が甚大になる可能性のあるエリアの把握にあたっては、様々な資料を活用してこれらの植物が生育している場所を抽出して地図上にプロットします。特に、果樹園地帯などは侵入を許してしまうと、甚大な被害に繋がりかねないので注意が必要です。

ちなみに、この地図化の作業は、GIS(地理情報システム)()というPCソフトを使って行います。GISでは、電子地図をベースに様々な地理空間情報を重ね合わせ、編集、管理、さらには地点間の結びつきの強さなどを分析し、それを可視化することが可能です。
※GIS(地理情報システム)は、地図を基盤に位置情報を持つ様々なデータを重ね合わせ、視覚的に分析・管理するシステムです。

そして、GISを使ってこれらの情報を使い、被害が発生しそうな場所を把握したら、地域の地形的・環境的な特性や、クビアカツヤカミキリの移動分散能力等を考慮して分析し、リスクに応じてその危険度を数値化することで、下図のような警戒エリア図が完成します。
この警戒エリア図があることで、侵入リスクが高いエリアが視覚的に把握でき、被害を未然に防ぐための対策をとることができます。また、仮に被害が発生してしまっても、その被害を拡大させないための方策を早期に立案し、実行することも可能となります。

▲警戒エリア図。福島県における、クビアカツヤカミキリの警戒エリアを当社で作成。設定基準を設けて点数化し、それを色分けすることで、可視化することに成功しました。

なお、この警戒エリア図の作成は、画一的な作業で出来上がるものではなく、対象となる地域の地形的・環境的な特徴の把握やクビアカツヤカミキリの移動分散の想定といった、当社がこれまでに培ってきた経験や技術が重要な判断要素となります。

■GISでできること
データの可視化
地域ごとの人口密度や売上高、顧客分布などのデータを地図上で色分けし、傾向を視覚的に表示できます。いわゆるハザードマップもこの方法で作成できます。

・空間分析
位置関係や地理的なパターンを分析し、空間的な傾向を明らかにします。災害時や物流における最短・最安のルートを算出することも可能です。また、浸水想定区域や土砂災害の危険地域を特定することもできます。

・データの統合・関連付け
異なる地理空間情報(例: 航空写真、交通情報など)を重ね合わせることで、関連性を分析できます。

このように、都市計画、インフラ、防災、物流、マーケティング、環境モニタリングなど、多くの課題解決に不可欠なツールです。

②早期防除の対応策考案

「特定外来生物」に指定された外来カミキリムシが確認された場合は、早期の根絶を目標とし、速やかに防除する必要があります。

被害を拡げないためには、伐採処理が第一ですが、私有地での発生事例も多く、伐採できない状況も多々あります。
そのため、写真に示したとおり、ネットによる封じ込め、さらには薬剤の注入による対策が実施されることもあります()。
※地域環境計画では、防除ネット「クビアカガードネット」のほか、各種薬剤の取り扱いもあるので、ご相談ください。

▲ネットによる封じ込めを行うこともあります

③各主体の役割設定

早期防除計画を有効に機能させるためには、設定した警戒エリアをもとに、自治体(行政)をはじめとして、各主体の役割を想定した体制を考案します。

具体的には、県・市町村・住民・民間企業などのぞれぞれの主体の役割を明確に設定し、各主体が役割を認識しておくことが重要です。こうしておくことで、円滑な情報共有や、監視・防除の実施体制を構築することが可能となります。  

まだまだいる?外来カミキリムシの脅威

実はクビアカツヤカミキリ以外にも、いわゆる「外来カミキリ」は日本に定着しています。

ツヤハダゴマダラカミキリ

特定外来生物。中国、朝鮮半島等が原産のカミキリムシです。

        ▲ツヤハダゴマダラカミキリ(外来種)             ▲ゴマダラカミキリ(在来種)

成虫の体長は20~35mmで、在来の同属種であるゴマダラカミキリに似ています。しかし、外来種のツヤハダゴマダラカミキリは上翅基部()に凹凸がなく、光沢が強いです。
※上翅基部…硬い翅の付け根部分のこと。

▲ツヤハダゴマダラカミキリの上翅基部は
ツヤツヤしています。
▲ゴマダラカミキリの上翅基部
ザラザラしています。

そして、ツヤハダゴマダラカミキリには胸部の2つの白紋が無く、小楯板()にも白い軟毛がありません。
小楯板昆虫の背中、胸部のすぐ後ろにある、三角形のような形状をした部分のこ

▲ツヤハダゴマダラカミキリのアップ                   ▲ゴマダラカミキリのアップ

果樹園や街路樹に寄生し、兵庫県や宮城県、茨城県などで発生しているのが確認されています。

サビイロクワカミキリ

特定外来生物。中国、ミャンマー、タイ、インド等が原産のカミキリムシです。

成虫の体長は29~37mmで、サビ色の体に白い斑点があるのが特徴です。イヌエンジュやエンジュに寄生し、福島県でのみ確認されています。

さいごに

弊社では、設定した警戒エリアを元に、
①地域の特性を加味した早期発見方法
②これにより想定される事態の対応策を包括した早期防除計画
③各主体の役割を想定した体制を提案することが可能
です。

また、弊社ではクビアカツヤカミキリだけではなく、アライグマ防除やキショウブ除去、ヒアリの侵入状況調査や、アルゼンチンアリの分布調査など、他の外来生物問題にも動植物問わず幅広く対応しております。
外来生物の動植物調査や防除計画、駆除や防除研修にも実績がありますので、被害や対策にお困りの場合は、ぜひとも弊社にお声がけください。

参照WEBサイト

■サクラの外来害虫“クビアカツヤカミキリ”情報 – 埼玉県環境科学国際センター
(2025.09.16閲覧)
https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/center/kubiaka.html
■どんな法律なの? | 日本の外来種対策 | 外来生物法 – 環境省
(2025.09.17閲覧)
https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/outline.html
■ツヤハダゴマダラカミキリ / 国立環境研究所 侵入生物DB
(2025.09.17閲覧)
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/60310.html
■特定外来生物サビイロクワカミキリに注意してください – 群馬県ホームページ(自然環境課)
(2025.09.17閲覧)
https://www.pref.gunma.jp/page/682490.html
■ツヤハダゴマダラカミキリに御注意ください – 埼玉県
(2025.09.17閲覧)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0907/tuyahadakamikiri.html
■特定外来生物ツヤハダゴマダラカミキリについて – 太田市ホームページ(環境対策課)
(2025.09.18閲覧)
https://www.city.ota.gunma.jp/page/1049883.html
■東京都 外来種対策行動の手引き みんなで実践!外来種対策からはじめるネイチャーポジティブ(東京都環境局)
(2025.10.02閲覧)
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/invasive-species-book-all-1-pdf
■クビアカツヤカミキリによる令和6年度被害状況について(自然環境課、農政課、蚕糸特産課)- 群馬県ホームページ
(2025.10.23閲覧)
https://www.pref.gunma.jp/site/houdou/667899.html
■クビアカツヤカミキリの侵入防止及び防除対策- 和歌山県ホームページ
(2025.10.23閲覧)
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/072000/d00216584.html

資料のダウンロード

クビアカツヤカミキリの防除計画の資料は下記ボタンよりダウンロードできます。

上森 大幹 

Hiromoto AGEMORI
株式会社地域環境計画 東北支社 自然環境研究室